VISIT連載企画 医療人。第一回|訪問看護ステーションの転職&見学 求人情報サイト「VISIT」VISIT連載企画 医療人。第一回

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こんにちは、VISITの甲斐です。
早いものでVISITを立ち上げてからもう一か月が過ぎようとしています。
春らしさはどこへやら、夏の始まりを感じるような暑さに少々参ってしまいます。

さて、私事はさておき、本日は前回掲載させていただき、好評を得た看護師太田さんのコラムの第二弾となります。

相も変わらずコロナが終息の兆しをみせないため、今回は太田さんが訪問看護のお仕事で得た経験談を寄稿いただきました。

医療や介護の現場において生死は避けて通れないものですが、太田さんがその中で何を感じ、何を得たのかをご案内できればと思っています。

それではどうぞ。

PROFILE

インタビュアー

ライター 甲斐 博之
大学卒業後、食品会社で勤務し、知人の紹介により訪問看護ステーション、在宅医療のクリニックを運営する法人に入社。看護師を中心とした医療介護職の人材紹介業務の立ち上げに関わり、同時に法人の採用や広報を担当する。訪問看護との関りが多く、その中で患者さま、看護師それぞれの立場でお役に立てないかと思い訪問看護ステーションの求人に特化した「VISIT」を立ち上げる。

インタビュアー

執筆者 訪問看護ステーション管理者 太田(仮名)
東京都内で訪問看護ステーションの管理者を行っています。現在は訪問看護を中心に、自身の経験などを通じて多くの従事者や、医療介護の現場を知らない人たちにも情報や思いを届けたいと思い執筆活動などを行っています。

終末期の利用者様の訪問を通して

これは、私が訪問看護のお仕事で経験した一つのエピソードです。

元デザイナーの90代男性Kさん。
彼は肺がん末期の利用者様でした。
酸素投与を開始しており、すでに呼吸は限界な状態。
麻薬使用を受け入れられ、眠る時間が増えてきた頃のお話です。


私が訪問に伺ったある日、Kさんこう言いました。

「人生はあっという間に終わってしまうんだよ。後悔しないために毎日努力を続けなさい。」
その言葉とともに笑顔で私の首にスカーフを巻いてくれました。

彼は元デザイナーです。
どの色が合うかコーディネートするその表情はとても真剣で、Kさんであり続けるその姿勢に胸が熱くなりました。

本当は起き上がるだけで呼吸が乱れ、辛い状態なのです。

私には、この場でご進物は頂けないことを伝えることはとてもできず、
「ありがとうございました」と深くお礼を申し上げる事しかできませんでした。

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その3日後のことです。
経口からの麻薬投与が困難となりPCAポンプによる持続麻薬投与が開始となりました。この処置によって肺がんの終末期に呼吸が出来ずに苦しみもがくことなく、ボタンを押せば麻薬が投与でき、苦しさや辛さが緩和します。

麻薬の使用方法、必要性などをしっかりとお伝えし、苦しみを我慢する必要は全くないということを伝え続けました。

その日以降、Kさんはボタンを握りしめて生活をしていました。
このボタンはKさんにとっての安心になったのだと思います。
会話は難しくなっていきましたが、苦しむことなく、疼痛管理は良好に経過しました。

そうして7日後のことです。Kさんは亡くなりました。
亡くなる直前には少し笑みをみせ、ご家族、看護師が見守る中息を引き取りました。

これが私とKさんのエピソードです。
訪問看護師としてすべきことは多岐にわたります。
チームで支え合い、意見を出し合い、医師の病状説明に合わせた声掛けを心掛けます。
疼痛管理、管の管理、終末期における日々変化する病態を理解し、家族、本人に安心できる声掛けと予測をお伝えする必要があります。

そしてお亡くなりになったあと、もっとできることがあったのではないかと振り返ります。

相手の目をみて相手の気持ちを受けとめること。
丁寧にお辞儀をすること。
感謝すること。
頂いた笑顔にもっと大きな笑顔でお返しするとその場の空気が変わること。

在宅の現場で仕事をしている私は、人生の大先輩方にたくさんのことを学ばせて頂きました。

ふと振り返ると、学ばせて頂いた様々な想いで胸がいっぱいになります。

これから出会う利用者様にとっても、私の「ありがとう」の気持ちは「心からのありがとう」だと伝わるように、ひとつひとつ丁寧にケアを行っていきたいと思います。

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今でも思うのです。
私は人生の最期においてKさんのように前向きで真っ直ぐで誠実な言葉を誰かに残せるだろうか。

その時私が看護師を続けてきたことが自分の証となるように、今日も毎日努力を続けたいと思います。
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